三階建ての住まいで、「特定の部屋だけWi-Fiが繋がらない」「動画が途中で止まってしまう」といった経験はありませんか。
広さや階層、建物の構造が原因で、Wi-Fiの電波が家全体に均等に届かないことは、多くのご家庭が抱える悩みです。
特に鉄骨構造の住宅では、電波が遮断されやすく、問題はより深刻になりがちです。
この記事では、三階建ての住まいでWi-Fiが不安定になる根本的な原因を解明し、誰でも実践できる具体的な改善策を専門的な視点から詳しく解説します。
- 三階建てでWi-Fiが不安定になる原因
- ルーターの最適な設置場所と選び方
- メッシュWi-Fiと中継機の具体的な活用法
- 建物の構造や利用目的に合わせた改善策
三階建てのWi-Fiが抱える構造的な課題

三階建てのソコが知りたい・イメージ
まずは、なぜ三階建ての住まいでWi-Fiが不安定になりがちなのか、根本的な原因から見ていきましょう。
3階建てでWi-Fiが届かない根本原因

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三階建ての住宅でWi-Fiの電波が届きにくくなる主な原因は、物理的な距離と障害物にあります。
一般的なWi-Fiルーターから発信される電波は、球体状に広がりますが、その強度は距離が離れるほど弱まる性質を持っています。
一階にルーターを設置した場合、三階の部屋までは単純な直線距離が長くなるだけでなく、床や壁といった複数の障害物を通過しなければなりません。
特に、Wi-Fiで利用される周波数帯のうち、高速通信が可能な5GHz帯は、直進性が強い反面、壁や障害物に対して弱い性質があります。そのため、階をまたぐと電波が大幅に減衰してしまうのです。
一方で、障害物に比較的強い2.4GHz帯は、遠くまで届きやすいものの、電子レンジやコードレス電話、Bluetooth機器など、多くの家電製品と同じ周波数帯を使用しているため、電波干渉を起こしやすく通信が不安定になる弱点があります。
したがって、物理的な距離と障害物の多さという二大条件を満たす三階建ては、Wi-Fiの安定通信にとって不利な環境であると言えます。
最適なWi-Fiルーターの設置場所は『真ん中』
Wi-Fiの通信品質を改善する上で、ルーターの設置場所は非常に大切な要素です。
電波はルーターを中心に同心円状に広がるため、家の中心に置くのが理想的と考えられます。三階建て住宅の場合は、家全体の中心となる2階の、なるべく開けた場所に設置するのが基本セオリーです。
廊下や階段の踊り場など、各階への見通しが良い場所を選ぶと、電波が効率的に広がりやすくなります。
また、設置する「高さ」も通信の安定性を左右します。電波は床や壁に吸収されたり反射したりするため、床に直接置くのは避けるべきです。
理想的には、床から1〜2メートルほどの高さがある棚の上などに設置することで、電波の減衰を最小限に抑えることができます。
さらに、テレビや電子レンジ、水槽といった電波を遮ったり干渉したりするものの近くは避けましょう。
ルーターのアンテナが可動式の場合は、全方位に電波が届くように、アンテナをそれぞれ異なる角度に調整する工夫も有効な手段となります。
無線LANと3階建て鉄骨住宅の相性は最悪?

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無線LAN、つまりWi-Fiの電波は、建物の構造材に大きく影響を受けます。
特に、重量鉄骨や鉄筋コンクリート(RC)構造の住宅は、木造住宅に比べてWi-Fiの電波を通しにくいという特性があります。
これは、鉄骨や鉄筋が電波を吸収・反射してしまうためで、電波の減衰が著しくなるからです。
ヘーベルハウスに代表されるような重量鉄骨造の住宅では、外壁だけでなく、床にもALCコンクリート(ヘーベル板)が使用されていることが多く、これが階層間の通信を阻害する大きな要因となります。
木造住宅であれば問題なく届いていた電波も、鉄骨やコンクリートの壁・床を隔てることで、三階まで届く頃には著しく弱まってしまうのです。
このような住宅で快適な通信環境を確保するためには、一般的なルーター1台の設置だけでは不十分なケースが多く、後述するメッシュWi-Fiや中継機といった、より強力な対策を講じることが不可欠です。
Wi-Fiルーターを3階建て住宅で選ぶコツ
三階建て住宅で使用するWi-Fiルーターを選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
まず、より遠くまで電波を届けられる「ハイパワー」や「ビームフォーミング」機能を搭載したモデルを選ぶことが基本です。
ビームフォーミングとは、スマートフォンやパソコンなどの端末の位置を検知し、その方向に向けて集中的に電波を送信する技術で、障害物が多い環境でも通信の安定性を高める効果が期待できます。
また、対応するWi-Fiの規格も大切な選定基準です。最新規格の「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」や、さらに新しい「Wi-Fi 6E」に対応したルーターは、従来の規格に比べて通信速度が速いだけでなく、複数の端末を同時に接続した際の安定性も向上しています。
特に、オンラインゲームや4K動画のストリーミングなど、大容量のデータ通信を行う家庭では、これらの最新規格に対応したルーターの恩恵は大きいでしょう。
ただし、どれだけ高性能なルーターを導入しても、1台で三階建ての隅々までを完璧にカバーするのは困難な場合がある点は、念頭に置いておく必要があります。
通信安定の鍵を握る2階の役割とは

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三階建て住宅において、家全体のWi-Fi環境を安定させる上で、2階は極めて戦略的な場所となります。
前述の通り、ルーターを設置する最適な場所として2階が推奨されるのは、家全体の地理的な中心に位置し、1階と3階の両方へ均等に電波を届けやすいためです。
ルーターを2階の開けた場所に置くだけで、1階や3階に設置するよりも、家全体の電波状況が改善されるケースは少なくありません。
この配置により、1階のルーターからの電波を2階で確実にキャッチし、増幅して3階へと届けることができます。
このように、2階を「通信のハブ」として活用することが、三階建て住宅における快適なWi-Fi環境構築の鍵を握っているのです。
三階建てWi-Fiを快適にする具体的な解決策

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ここでは、三階建てのWi-Fi環境を劇的に改善するための具体的な解決策を、機器の選び方から設定のポイントまで詳しく解説します。
3階建てWi-Fiにはメッシュ導入を検討
三階建て住宅のように、広く複雑な間取りで安定したWi-Fi環境を構築したい場合に、現在最も推奨される解決策が「メッシュWi-Fi」の導入です。
メッシュWi-Fiとは、親機となるメインルーターと、複数の子機(サテライト)が互いに連携し、家全体に網目(メッシュ)のような単一のWi-Fiネットワークを構築するシステムです。
このあたりの解説は、バッファローのサイトがわかりやすいので、よければご参考ください。

このシステムの最大のメリットは、家中どこにいても常に最適な電波状態を維持できる点にあります。
スマートフォンやノートパソコンを持って移動しても、端末が自動的に最も電波の強い親機または子機にシームレスに接続を切り替えてくれます。
そのため、従来の中継機で発生しがちだった、接続先を手動で切り替える手間や、移動中に通信が途切れるといったストレスがありません。
初期費用は通常のルーターや中継機よりも高価になる傾向がありますが、設定の容易さや通信の安定性を考慮すると、三階建て住宅には最適な投資と言えるでしょう。
メッシュWi-Fiと中継機の性能差を比較
Wi-Fiのエリアを拡張する方法として、メッシュWi-Fiの他に「中継機」を利用する方法もあります。
中継機は、親機ルーターの電波を受け取り、それを増幅して再送信することで、電波の届く範囲を広げる機器です。メッシュWi-Fiと比較して安価に導入できる点が大きなメリットです。
しかし、性能面ではいくつかの注意点があります。従来の中継機は、親機と子機が同じ周波数帯で通信を行うため、理論上の通信速度が半減してしまうというデメリットがありました。
また、親機と中継機はそれぞれ別のネットワークとして認識されるため、移動した際に手動で接続先を切り替える必要があるなど、利便性の面でも劣ります。
一方、メッシュWi-Fiは親機と子機が連携して最適な通信経路を自動で確保し、1つのネットワークとして機能するため、速度の低下が少なく、家中のどこでも快適な通信が可能です。
メッシュWi-Fiと中継機のどちらを選ぶべきか、以下の表に主な違いをまとめました。
比較項目 | メッシュWi-Fi | Wi-Fi中継機 |
---|---|---|
通信速度 | 低下しにくい | 半減する場合がある |
接続の安定性 | 高い(自動で最適経路を選択) | 親機との距離や障害物に依存 |
ローミング | シームレス(自動切替) | 手動切替が必要な場合がある |
設定の容易さ | 簡単(専用アプリ等) | 比較的簡単だが機種による |
導入コスト | 高価 | 安価 |
おすすめの環境 | 3階建て、広い戸建て、複数端末 | 1〜2部屋だけ電波を補強したい |
これらの特性から、家全体を快適なWi-Fi環境にしたい三階建て住宅には、メッシュWi-Fiの導入がより適していると考えられます。
Wi-Fi EasyMesh対応機種の選び方

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メッシュWi-Fiを導入する際、以前は同じメーカーの専用機器で揃える必要がありました。
近年「Wi-Fi EasyMesh」という標準規格が登場したことで、異なるメーカーの対応機器同士でもメッシュネットワークを構築できるようになりました。
これにより、機器選びの自由度が格段に向上しています。
EasyMesh対応機種を選ぶ際は、まずWi-Fiの通信規格を確認しましょう。前述の通り、高速で安定した通信が可能な「Wi-Fi 6」や「Wi-Fi 6E」に対応したモデルがおすすめです。
これらの規格は、メッシュWi-Fiのバックホール(親機と子機間の通信)をより効率的に利用できるため、システム全体のパフォーマンス向上に繋がります。
主要メーカーのEasyMesh対応シリーズ
BUFFALO(バッファロー):WNR-5400XE6P/2S
国内シェアが高く、初心者でも安心して選べるバッファロー製品の中でも、特におすすめなのがこのモデルです。次世代規格であるWi-Fi 6Eに対応しており、通信速度の検証では700Mbps近い高速を記録。
オンラインゲームも快適に楽しめる性能を誇ります。2台のルーターがペアリング済みのセットモデルのため、購入後に難しい初期設定が不要。電源を入れるだけですぐに使い始められる手軽さが大きな魅力です。
3階建ての戸建てでも隅々まで高速通信が期待でき、性能と使いやすさのバランスが取れた、多くの方におすすめできる製品と考えられます。
NEC(Aterm):PA-WX5400HP
老舗IT企業であるNECのAtermシリーズも、安定した性能で定評があります。この「PA-WX5400HP」はWi-Fi 6に対応し、単体での通信速度はトップクラスです。
接続範囲も広く、電波が届きにくい3階の部屋でも高いパフォーマンスを発揮するポテンシャルを持っています。
一方で、複数の端末を同時に接続すると通信速度が大きく低下する傾向があるため、スマート家電やゲーム機など接続機器が多いご家庭では注意が必要かもしれません。
接続台数が比較的少なく、一台あたりの通信品質を重視する環境で真価を発揮するモデルと言えます。
TP-Link:Deco BE85
とにかく通信速度を最優先したい、というユーザーにとって最適な選択肢となるのが、最新規格「Wi-Fi 7」に対応したこの超高速モデルです。
実際の検証では通信速度が1Gbpsを超える数値を記録するなど、他を圧倒する性能を持っています。3階建ての広い家でも、場所を選ばずに最高の通信環境を享受できるでしょう。
ただし、最新規格のハイエンドモデルであるため価格は高価です。また、Wi-Fi 7の性能を最大限に引き出すには、スマートフォンやPC側も同規格に対応している必要があります。
将来を見据え、最高のパフォーマンスに投資したい方向けの製品です。
ELECOM(エレコム):WMC-2LX2-B
低予算で手軽にメッシュWi-Fiを試してみたい、というニーズに応えるのがエレコムのこのスターターキットです。
2台セットでありながら1万円以下で購入できる場合もあり、コストパフォーマンスの高さが際立ちます。ペアリング済みで出荷されるため、導入が手軽なのも嬉しいポイントです。
ただし、価格が抑えられている分、通信速度や接続範囲は上位モデルに及びません。
オンラインゲームや重いデータのダウンロードには向きませんが、インターネットの主な用途がウェブサイトの閲覧やSNSといった、通信負荷の少ない使い方であれば、選択肢の一つになるでしょう。
ゲームやパソコン作業を快適に楽しむには

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オンラインゲームや大容量ファイルを扱うパソコン作業では、通信の「速度」だけでなく「安定性」と「低遅延(Ping値)」が極めて重要になります。
Wi-Fiの電波が弱いと、ラグ(遅延)が発生してゲームで不利になったり、Web会議の映像や音声が途切れたりする原因となります。
これらの問題を解決するためには、やはりメッシュWi-Fiの導入が最も効果的です。家中のどこにいても強力な電波を確保できるため、通信が安定し、遅延も発生しにくくなります。
さらに万全を期すのであれば、有線LAN接続との併用が理想的です。
メッシュWi-Fiの子機にはLANポートが付いているモデルが多く、そのポートとゲーム機やパソコンをLANケーブルで直接接続することで、Wi-Fi接続よりもさらに高速で安定した通信が実現できます。
特に、一瞬の遅延が勝敗を分ける対戦型のオンラインゲームや、高画質な動画配信を行う場合は、この「メッシュWi-Fi+有線接続」の組み合わせが最強の環境と言えるでしょう。
LANケーブルを選ぶ際は、通信速度1Gbps以上のインターネット回線であれば「CAT6」以上の規格のものを選ぶと、性能を最大限に引き出すことができます。
快適な三階建てWi-Fi環境を構築する要点
これまで解説してきたポイントを踏まえ、三階建て住宅で快適なWi-Fi環境を構築するための要点を以下にまとめます。
これらの項目を総合的に検討し、ご自身の住まいの環境や利用スタイルに最適な方法を見つけることが、ストレスのないインターネット生活への第一歩となります。
- 三階建てのWi-Fi問題は物理的な距離と床や壁などの障害物が主な原因
- 高速な5GHz帯は障害物に弱く階をまたぐと電波が減衰しやすい
- 2.4GHz帯は干渉に弱く通信が不安定になることがある
- ルーターの設置場所は家全体の中心となる2階の開けた場所が理想
- 設置する高さは床から1〜2メートル離れた場所が望ましい
- 鉄骨や鉄筋コンクリート構造の家は特に電波が届きにくい
- ルーター選びではビームフォーミング機能搭載モデルが有効
- Wi-Fi 6やWi-Fi 6Eなど最新規格への対応も確認する
- 三階建て全体をカバーするにはメッシュWi-Fiの導入が最も効果的
- メッシュWi-Fiは移動しても自動で最適な電波に接続を切り替える
- 中継機は安価だが通信速度が半減するなどのデメリットがある
- 「Wi-Fi EasyMesh」規格なら異なるメーカーの機器でも連携可能
- オンラインゲームやパソコン作業には有線LANとの併用が最強
- メッシュの子機のLANポートを活用して有線接続を行う
- 最終的には建物の構造や予算に応じて最適な解決策を選ぶことが大切
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